☆本のご紹介。「人はだれでもエンジニア」ヘンリー・ペトロスキ・著

今回は本のご紹介です。 😀

「人はだれでもエンジニア」ヘンリー・ペトロスキ・著
北村美都穂・訳 鹿島出版会

 

あるビジネス界の著名人がこんなことを言っておられました。
「今はもうエンジニアとデザイナーの時代だよね。」

 

確かに、Tech系人材マーケットに詳しいプロフェッショナルに
聞いたところ、今、エンジニアとデザイナーはどこでも引っ張りだこのようです。

 

なかでもエンジニアは、法外な給与オファーがもらえ、
企業によってはストックオプションまで付く、夢の職業です。

シリコンバレーでアプリでも作って創業すれば、一夜で億万長者になることだって
可能です。

 

だったら自分もエンジニアを目指して勉強しようか……と思っても、
いざ勉強しようとすると、専門知識の壁に阻まれ、尻込みしてしまいます。 😥

 

「せめてエンジニアの思想・センスだけでも身につけば」と思う人に、
これ以上ない、素晴らしい教科書を見つけたので、
今回はそれをご紹介します。

 

 

本書は、米デューク大学教授で、土木工学、失敗学などを
専門とするヘンリー・ペトロスキ氏が、まったくの初心者に向けて、
エンジニアリングの要諦を語った一冊です。

 

深い教養でもって、エンジニアリングの世界の面白さ、奥深さを
語っており、これを名著と呼ばずして何と呼ぶ、という世界です。

 

著者は、エンジニアリングを理解する上での「核心」を、
このように紹介しています。
いきなりしびれる文章です。

 

<エンジニアリングを理解する上の核心は、「失敗」──この本の
議論の中では、機械や構造物が破損すること──だ。「失敗」を
避けることが、エンジニアリングの、第一の、そして最大の目的だからだ。

だから、すさまじい大惨事が起こったら、それは、つまるところ
設計の失敗である>

 

すさまじい大惨事が起こった国の国民としては、これは
無視できない書物なのがおわかりでしょうか。

 

以前にも、『失敗百選』という、エンジニアリングの名著を
紹介しましたが、読み物としては、『失敗百選』を凌ぐ面白さです。
手に入れられた人は、ラッキーですね。

 

※参考:『失敗百選』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4627664710/businessbookm-22/ref=nosim

 

さっそく、本のポイントをご紹介しましょう。

———————————————–

エンジニアが作る構造物の強度や挙動を予知するというのは、
ちょっと考えるほど簡単で、すっきり割り切れる仕事ではない。

 

三びきの子豚は三びきとも、狼に壊されてはならないという
構造上の要求は心得ていた。

だが、狼の乱暴な力がどのくらい強いかについては、
三びきの考えは違っていた。

 

疲労というエンジニアリング上の概念を学生に教えるとき、
私はひと箱の紙クリップを教室に持って行く。

学生たちの目の前で、一つのクリップを
平らに伸ばし、またもとのように曲げる。曲げ伸ばし
を繰り返しているうちにクリップは二つに折れる。

これが疲労破壊というものだ、と学生たちに教え、何回曲げ伸ばしすればクリップ
が折れるかは、クリップの強度によるだけでなく、曲げ伸ばしの
激しさにもよるのだと言ってきかせる。

この壊れ方が私にとって面白かったのは、英語で最も高い頻度で
使われる文字と、スティーヴンの「スピーク・アンド・スペル」で
疲労破壊を来したキイとの間に深い関係があることだった。
「ENTER」キイが最初に折れたのに不思議はない。

単語を一つ入力するごとに叩かれるので、どの文字のキイよりも使用回数が多いからだ。
英語で最も多く出てくる八つの文字──E、T、A、O、I、N、S、Rの順
──のうちの五つ(E、T、O、S、R)のキイが、
最も早く壊れたうちに入っていた。

 

われわれの中には、膝がまず悪くなる人もいるし、まず腰にくる人もいるが、
身体中の間接が全部一時にばらばらになる人はいない。

そこでホームズは、どこにも弱い繋ぎ目のない馬車を設計しようと
考えることの愚かしさを構想したのだった。

われわれが作るもの何一つとして、最初の強さを永久に持ち続けるものはない。

 

自分が設計しようとする構造物には、重力以外にいかなる力が作用することになるかを、可能なかぎり予想すること。

 

◆114人が死亡。米国史上最大の建造物惨事と言われた、
カンザス・シティ・ハイアット・リージェンシー・ホテルの事故の説明。

簡単な比喩を使ってこの問題のメカニズムを考えてみよう。
もとの設計の吊り棒を一本のロープと考え、二層の歩廊は二人の人で、
そのロープにつかまっているのだと考えよう。

この二人の体重は、ロープを握っているそれぞれの人の手を通してロープに
かかる。

もとの設計の歩廊の支持法は、一本の同じロープの上部と下部に、別々
に二人の人がつかまっているのと同じである。

ロープの強度が十分で、それぞれの人の握る力が十分強ければ、二人ともロープに
つかまって落ちずにいることができる。

しかし、もし下の人がつかまっているのが同じロープではなく、上の人の脚に結んである別のロープだとしたら、上の人の握力は二人分、ざっと二倍の体重を
支えなければならなくなる。

決定的な因子になるのはロープの強度ではなくて、
上の人の握力になるのである。

———————————————–

巧みな比喩と丁寧な説明により、複雑なはずのエンジニアリングの
考え方が、すっきり頭にインストールされます。

本書を読んでから、今、世界が向かいつつあるAI、IoTの世界
(自動運転含む)を考えると、やはりエンジニアリングの基礎教育は、
これからMUSTだと思わざるを得ません。

その時、最適な教科書となるのは、おそらく改訂した本書のはずです。

ぜひ読んで、エンジニアリングの思考とセンスを、叩き込んでください。

 

 

もう一つのブログはこちら!
↓↓↓
鍼灸マッサージ師のための開業成功マニュアル
「あはき」の開業でもビジネス感覚を!

※「あはき」とは、あんま、マッサージ、指圧師・はり師・きゅう師のことです。

ブログを更新しました
↓↓↓
☆当院独自の治療法!東洋医学的関節振動療法(OJVT)3.膝関節の運動学

 

コメントを残す